積層造形
金属積層造形は出発原材料である粉末を選択的に溶融し、何層も繰り返すことで立体物を作製する、3Dプリンターと呼ばれる新技術です。
国際標準化機構(ISO)傘下のISO/TC 261 Additive manufacturing Technical Committee専門委員会261にISO17296-2:2015 AM Part2として規定された、金属に限らない7種類の手法がある。
下記では、これら7種類の手法を説明したい。
1. 粉末床溶融結合法Powder Bed Fusion
粉末床形成と熱源走査を繰り返すことで造形する方法である。
「粉末床形成」粉末ホッパーから供給された粉末をリコーターでステージに敷きつめ、粉末床を形成する。「熱源走査」その上をレーザー或いは電子ビームの熱源が選択的に走査することで瞬間的にそして局所的に溶融凝固させる。ステージを一層分下げ、また粉末床形成と走査を繰り返すことで造形する。
この手法は、微粉(10-100 μm)を溶融凝固させるため、精密な造形が期待される。また、コンピューターベースの3次元的なデジタルモデルの溶融凝固シミュレーションを造形にリアルタイムでフィードバックし造形精度や組織制御に関する可能性が期待される。
PBF-LB/M、PBF-EB/M、EBM、DMLS、SLS、SLM、MJF
2. 指向性エネルギー堆積法Directed Energy Deposition
溶融池への原材料添加により造形する方法である。
「溶融」熱源により該当箇所を溶融し、「堆積」フィーダーから原料を溶融池に堆積することで造形を行う。
レーザークラッディングやビルドアップ溶接と同じ方法です。この手法は、供給部材の種類と熱源で多岐にわたっている。この手法は現状大気中あるいは防護シールド内において高速に大型部材の造形に適している。
DED、WAAM、LMD、EBAM、WLAM、LENS、LDW
3. 材料押出法Material Extrusion
ノズルから原料入り熱可塑性フィラメントを加熱しながら押し出し堆積する。そしてその後の熱処理による焼結および脱脂効果で造形する方法である。
「成形」フィーダーから原料入り熱可塑性フィラメントを加熱しながらステージに押出し成形する。「熱処理」そして成形物を熱処理炉にて熱処理脱脂することで造形を行う。
この手法は現状最も安価に造形が可能である。注意点は、造形前後で体積変化が著しく、予め変化割合を考慮して造形する必要がある。
FDM、FFF
4. 結合剤噴射法Binder Jetting
粉末床形成とバインダー滴下を繰り返し、そしてその後の熱処理による焼結および脱脂効果で造形する方法である。
「粉末床形成」粉末ホッパーから供給された粉末をリコーターでステージに敷きつめ粉末床を形成する。「のりづけ」粉末床にプリントヘッドよりバインダーをのりとして選択的に走査し滴下する。ステージを一層分下げ、また粉末床形成とバインダー滴下を繰り返すことで成形する。「熱処理」その後は熱処理による焼結および脱脂効果で造形する。
この手法は現状最も安価に大量造形が可能である。HPの大型装置からExOneの小型装置まで、多くの企業が取り込んでいる。PBFと比較して、成形中の熱がないために造形物の残留応力を防ぐことができるが、完全溶融による結合ではないため機械的性質は劣る。
BJ
5. 材料噴射法Material Jetting
原料入り液滴を該当箇所にて滴下させて、その後熱処理による焼結で造形する方法である。
「成形」プリントヘッドから原料入り液滴をステージに滴下により堆積させて成形し、「焼結」そして各層ごとに熱処理等により焼結し造形を行う。
2021年現在は、金属積層造形技術に関してはXjet社による金属ナノ粒子入り液滴を蒸発させながら積層する方法(NanoParticle Jetting、NPJ)のみである。それ以外は、樹脂やロストワックス鋳造用のものである。
問題点は長時間造形と高コストな点である。
MJ、NPJ、DOD
6. シート積層法Sheet Lamination
シート状材料を層ごとに切り抜き結合させて造形する方法である。
シート状材料を層ごとにレーザー或いは超音波源にて溶接結合させながら、レーザー或いはカッターによって該当箇所をくりぬくことで造形する。
2021年現在は金属に限らず紙、ポリマー、樹脂からセラミックスまで多岐にわたっている。しかしながら、金属をシート状材料に作製できるものは限られ全体数はいまだ少ないのが現状である。
SLCOM、UAM、LOM、SL
7. 液槽光重合法Vat Photopolymerization
該当箇所の樹脂に硬化剤を滴下させて、その後UV光による硬化で造形する方法である。
液槽に光硬化性樹脂を選択的に滴下し、さらに該当箇所に向かって光を照射し各層を硬化させ積層する方法である。
2021年現在は、金属積層造形技術に関する製造法は構築されていない。レーザーで走査する方式がSLA(Stereolithography)、そして各層の断面画像を一括露光する方式がDLP(Digital Light Processing)である。
VAT、SLA、DLP、CDLP